創る人×raytrek インタビュー

映像制作

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

左から、小野寺絵美氏、谷内田彰久氏、中野裕太氏

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

25万「いいね!」を獲得したFacebookページを元にした作品ということでも話題を呼んでいる日台合作映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(原題:雖然媽媽說我不可以嫁去日本。)作品の内容もさることながら、映画制作の背後舞台裏でも斬新な取り組みが行われているのはご存知でしょうか? そのチャレンジとは、映画の撮影素材である6KのネイティブデータをPCで編集するというもの。その編集現場に、サードウェーブデジノスのクリエイター向けPCである「raytrek(レイトレック)」を採用いただきました。そこで、同作の監督であり、プロデューサーでもある谷内田彰久氏に、「raytrek」の採用で実現した新世代の編集プロセスとその効果、今後の展望についてお伺いしました。

――今回の映画は、今までとは違った取り組みをされているとお伺いしました。

谷内田:まずこの『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』という作品は、2012年からSNSですごくブレイクしたお話がもとになっています。皆さんご存じかもしれませんが、まとめサイトに上がり、去年11月には書籍化もされました。この作品は、"Facebookで出会ったふたり"というところから物語がスタートしていて、今の時代にふさわしく、映画になった時にSNSでも話題になりやすいのではないかということで、映画化する題材に選びました。

他の作品と違うところですが、普通の映画は原作者が過去に起こったことを書いたり、想像したことを書いたりするなど、完結している物語が映画化されます。今回の作品は、このふたりのやりとりが現在も進行中で、完結しているわけではありません。ですので、映画を撮る段階でもこのふたりと一緒になにか展開を考えられるのではないかと考えました。

たとえばヒロインであるリンちゃんの認知度は、台湾国内では非常に高く、プロモーションではツイッターのフォロワーなどによる口コミが期待できるのではないかと考えました。通常プロモーションと言えば、テレビや雑誌といったメディアに予算を多く使います。Webについては、ものすごく曖昧な力の入れ方というのが現状です。そこで逆手にとって、Webのプロモーションを重視して、SNSを積極的に使うように仕掛けました。

――どのように、プロモーション展開したのか教えてください。

谷内田:通常ですと、映画が完成したあとに、様々な会社様と「一緒になにかやりませんか?」というお声がけをするのですが、本作では映画を撮っている段階から、台湾と日本でユーザーが多いサイトやアプリと手を組ませていただいたので、ほとんど予算をかけずに宣伝をしていただくことができました。サードウェーブデジノスさんとご一緒させていただいているのも、じつはプロモーションの一環なんです。

――サードウェーブデジノスと本映画はどのような繋がりがあったのでしょうか?

谷内田:恋愛もの映画とサードウェーブデジノスさんとは一見繋がりませんが、本編ではなく制作環境の部分でご協力いただきました。僕たちが撮影した映画は、最近主流の4K解像度よりさらに大きな6Kのデータを扱っています。6Kのデータを編集するとなると、一般的なPCではデータが重すぎて編集できません。そのため、一度サイズの小さな映像データに変換し、その小さなデータで編集を進め、マスターアップ前にまた6Kのデータに差し替えて完成版を作るといった作業になります。

映画の撮影では、1日の撮影データだけで1~1.5TBになります。全体で言うと20TBくらいあります。これらのデータを作業用のデータに変換して、それから編集作業をと進めていくと膨大な時間がかかってしまいます。時間がかかるということはそれだけ制作費もかさむことになります。そこで6Kのデータをネイティブに編集できるPC作れないのか、サードウェーブデジノスさんにご相談させていただきました。

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

――サードウェーブデジノスとのファーストコンタクトはどんなキッカケだったのでしょうか?

谷内田:秋葉原の店舗に僕がお邪魔して、店員の方に相談しました(笑)。

――監督がショップ内でそんな相談をしたのですか?

谷内田:はい(笑)。かなり親身になって相談に乗っていただき、現在のご担当の方を紹介していただいたというワケなんです。

――PCの構成について、どのようなリクエストをしたのでしょうか?

谷内田:価格は50万円程度と言うことをまずお願いしました。映像の業界では、オフライン編集、オンライン編集というものがあります。今回制作をお願いしたPCは、オフライン編集という、まずザックリと編集して、マスターのデータを編集する方式のために使うPCではなく、最初からマスターデータを編集する、オンライン編集が可能なPCです。

日本にたくさんある各スタジオが、オフライン編集用のPCをオンライン編集が可能なPCに刷新する場合に、最大で使えそうな予算が50万円程度ではないかと考え、まずこの価格をリクエストしました。100万円になってしまうと、予算的に大きすぎて刷新できない。そうすると今まで通りオフライン編集しかできず、制作環境はなにも変わりません。なので、データをネイティブで編集できるPC環境を50万円でまず作りたかったのです。

――実際に使用した時の使い心地はどのような感じなのでしょうか。

谷内田:6K程度であれば、ネイティブでの編集が快適にできます。実際の複雑な作業は小野寺が担当しているので、小野寺に聞いてみてください。

――まず編集環境を教えてください。

小野寺:サードウェーブデジノスさんに製作していただいたPCと、バッファローさんにお借りしたNAS(HD-DT/R6シリーズ)がUSB3.0で接続されています。編集ソフトは「Adobe Premiere Pro CC」です。映像効果に関しては、「Aftereffects CC」を使用しています。それ以外は今回使用していません。

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

――Premiere Pro CCのタイムラインはどれくらいの数を使っているのでしょうか?

谷内田:仮構成のためのトラックも含まれているので少し多くなっていますが、だいたい12トラックくらい並んでいます。音声トラックも通常は4~8チャンネルのデータを2チャンネルにミックスダウンしたものを使うのですが、今回はミックスダウンする前のデータを貼り付けています。それでも普通に再生・編集できていますね。

――このネイティブの編集環境がなかった場合、サイズの小さなデータに変換する必要があったかと思います。それにはどれくらい時間がかかるのでしょうか?

小野寺:最初このお話をいただいた時に、ムービーの変換だけで1週間は欲しいなと思っていました。ところが監督から「ネイティブで編集してみようか」という話をされ「えっ? そんなことできるの?」と思ったのですが、実際編集を進めてみると、ちゃんと編集できるな……と、驚きました。Premiere Pro CCも使ったことがなかったのですが、使い勝手がとてもよくなっていてすぐに慣れました。

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

――今まではどんなソフトで編集されていたのでしようか?

小野寺:Avidの「Media Composer」や、Appleの「Final Cut Pro 7」で編集していました。Premiereは「Premiere 6.0」か「6.5」くらいのバージョンのときに一度使ったのですが、使い勝手が自分とは合わず、それ以降使っていませんでした。

ですが、「Final Cut」が「Final Cut Pro X」になってユーザーインターフェースが使いづらくなり、「Premiere Pro CC」でネイティブ編集できるということを聞き、改めて使わせていただいきました。この"ネイティブで編集できる"ということは、変換作業の1週間が必要ないということでもあり、ものすごい作業時間の短縮になるんです。

6KのネイティブデータをPCで編集するそのプロセスと効果とは?

――今回サードウェーブデジノスが製作した編集用PCにより、映像編集が大きく変わりました。今後、どのようなPCを期待されますか?

谷内田:オンライン編集の段階だけでなく、撮影現場でもすぐに編集できるような小型でハイスペックなPCが欲しいですね。撮影現場で軽く編集ができるような環境ができると、カットの撮り忘れがなくなり、さらに追加のカットを撮っておくといった映像素材の余剰を作ることができます。これにより編集の幅が広がりますよね。そのためにはもう少しPCのサイズを小さくしてもらいたいのと、REDのメディアをPCに挿せるマウントをPC前面部につけてもらいたいですね(笑)。

あと、WindowsベースのPCであれば、パーツが壊れても秋葉原に行けば、代わりのパーツを買ってすぐに交換できます。Macの場合、Appleストアに本体ごと持ち込み修理になり、代替機を貸してくれるわけではないので、作業がすべてストップしてしまいます。締め切りのある作業なので、これは大きな痛手になります。この違いは結構大事ですね。そしてもうひとつは、今回のPCには、PCI Express 2.0 x4ネイティブ接続のM.2 SSDや、GeForce GTX TITANが採用されています。

ですが、もう少しグレードを下げたパーツ構成のPCで、6Kの編集ができないかを突き詰めたいですね。もちろん、今後のために8Kでの編集が可能なハイエンドの構成も考えていきたいです。


映画の6Kデータをネイティブで編集したいという、谷内田監督のハードルの高いリクエストに見事に応えたraytrek-V。取材時には、そんなraytrek-Vで編集を手がける自称監督補佐の中野裕太氏(この日は主演俳優の肩書きは置いてこられたようです)の姿も見られました。監督がエキストラ出演しているシーンに編集が差し掛かると、「ばっさりカット!」と指示出しする中野氏と、その横で取材を受ける谷内田監督。

そんなユニークな現場で絶賛編集中の『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』は、2016年春公開予定です。谷内田監督のリクエストである8Kデータの編集にも応えられるPCは、近い将来リリースできる見込みです。ご期待ください!

映画『ママは日本へ嫁に行っちゃ ダメというけれど。』は、中野裕太、ジエン・マンシュー主演で2016年春公開予定。

公式Facebookページはこちら
https://www.facebook.com/mamadame.movie/
原作となるFacebookページはこちら
https://www.facebook.com/luffyimcoming
ページ
TOPへ